2008.06.10
花帰葬〜誕生日【花玄】
1.
このところ鷹は、留守がちだと聞いていた。
今年の誕生日は独りかもしれないって、玄冬の手紙のひとことが、
黒親子のすれ違いを思わせて、僕は居ても立ってもいられなくなっていた。
止まない雪が迫ってきて、白梟の態度もぴりぴりしているし、
黒鷹だって何かの算段で忙しいのかも――。
(ていうか、これ、絶対誘ってる。玄冬…)
手紙を握り締めて僕は呟いた。
別に、うまく留守なら二人きりになるチャンスだとか、そういう考えが、あるわけじゃない……。
僕は雪避けのマントを手に取ると、城の誰とも眼を合わせないようにして、
いつもの場所から城壁を飛び降り彼の元へと急いだ。
2.
白に塗りつぶされた草原を歩くのは一苦労だけど、夜になる前には彼の家に辿り着く。
雪に足を取られた人間より、俊敏に動ける動物は沢山いる。例えば熊とか…ね。
か弱い僕が熊と戦って一瞬で決着をつけてしまうところを、もしも誰かが見たら、
――別に構いやしないけど、余計な労力は避けたいから、家のノックも躊躇わない。
「玄冬。きたよ――」
(はあ……)
真っ直ぐにまっすぐに歩いてきたから、息が切れて、思わず深い溜息になる。
「花白? 来たんだ。……雪」
あらわれた玄冬は、僕が被っていたケープから、そっと雪を取り除いてくれた。
凍った欠片が温かい指先に壊されて、家の中からの光でキラキラと輝いた。
新雪に太陽が直接振りかかっても、こんな時の彼みたいに眩しくない。
「今、誕生日らしいモノを作ってたから、食べてくだろ?」
「あ…うん。もう出来てるの。黒鷹はどうしてんの。生肉切れで飢え死に、とか?」
フ、と笑って、台所へと先に進む彼。
彼の背中がいつもの歩調で台所に辿り着く頃には、僕の嫌な予感は最高潮に達していた。
3.
「先日十の国から行商人が来て、いいものを買ったんだ。」
「ちょ、と、待ってよ玄冬。また前みたいな“食べられない”ディナーだったら、来たこと後悔するからね!」
「そんなことはないだろう」
玄冬の暢気な口調がさらに僕の危機を煽る。いいものって何だろ、考えるだに恐ろしい。
「人魚のヒレ?キリンの背脂? ンもう、玄冬の訪問販売に騙される癖、絶対ダメだって!」
「そんなモノ売ってるワケないだろ!」
既に鍋には火が入っていて、コツコツと煮込まれているのが判る。
「判った、熊の手だ……」
「花白は人の弱みにつけこむなあ。で――今回の掘り出し物は」
玄冬は僕に何かを手渡した。白い包み紙には、多分細くて長いものが包まれていて、桜色が透けている。
「……にく?」
「なわけないだろう?ほら、これお前にやる」
「え…」
凍った肉や脂かと思った僕は、それが冷たくないことに眼を丸くして、思わずそっと鼻を近づけて匂いを嗅ぐ。……ろうそくだ。
白い紙を少しだけ破って包みを開けると、中には桜の模様が彫りこまれた、薄桃色の蝋燭が二本入っていた。
(わぁ…)
「いいの、これ……。キミの誕生日なのに」
「最後の二本だって言われて、お前の為に買った。
それに火をつけて春が来ることを祈ると、願いが叶うといわれている……らしい」
「そん、な」
願掛けの蝋燭をこの山奥まで売りに来るとは、馬鹿馬鹿しいような切羽詰っているような。
それを、なんでもないという声で彼その人が言うものだから、僕は胸が苦しくなる気がした。
蝋燭を胸に抱きしめて、彼の為に微笑みを作った。
「ありがとう…。部屋で使う。とても綺麗だね。君が好きなさくら…
ね、食事を頂くよ。黒タカにこのプレゼント、自慢してもいいくらいなんだけど」
玄冬はあぁ、と返事をして、愛用の寸胴なベに向かう。
ややして漂うコンソメの香り――ほっ、今日はフツウにシチューらしい。
「いただきまぁす!」
「いただきます」
「あは、今日のシチュー、最高のコンソメ!」
「だろう?」
残さずお食べ、と微笑む眼で、玄冬は僕の頭をそっとなでて、同じようにシチューを口に運ぶ。
小さな団欒、二人の口から漏れる湯気が、きっと外から覗き見てる鳥達から目隠ししてくれたらいいのにね――。
4.
その後、おなかが一杯になって、黒鷹のロッキングチェアでうたたねしていた僕。
玄冬が近づいて、毛布を掛けてくれるところで、現実に引き戻された。
「泊まっていけばいいのに」
「…ん、でも、無断外泊だから。あ、でも…」
玄冬の袖を引っ張って、こちらに影が落ちるともう一つの腕を伸ばし首を抱いた。
泊まって、という声が、本気なのも知ってる。けど、僕だって子供じゃないんだ。
「おやすみのキスだけくれたら、帰る。無事に、傷一つ無く…。そしてまた来るよ」
「お前、な……」
本当は、もう少し待てば、分厚い雲の下にもちゃんと朝が来る。
僕はその冥い、地獄のどこかを歩いているような気分になる、冷たい冷たい帰り道が嫌いじゃなかった。
今帰ればまた、彼にあえるのだもの――
「あ――忘れかけてたよ。おたんじょうび、おめでとう、玄冬」
ケープをきちんと着こんで灯を持たされた僕は、彼の身長に軽く背伸びをして、頬に口付けを送った。
(来年も、再来年も、絶対にお祝いするんだ。)
僕の決意が彼にとって、桜の花びら一枚より重かったら、嫌だなぁ――
終
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
誕生日(花白編)でーす。四月なのが玄冬でしたっけ… で12月が花白でしたっけ。
軽いノリで行き当たりばったりですね。多分、願掛け桜蝋燭を売りにきたのは、白梟な気がします。
そして花白の悪い予感は当たっていて、いつになく美味しいシチューには、玄冬秘蔵のへびさんの干物を出汁に使っていた……のでした。そんな事情を知っている黒鷹は居留守を決め込み――。
なんてオチ。てへっ。
ご精読ありがとうございました^^
このところ鷹は、留守がちだと聞いていた。
今年の誕生日は独りかもしれないって、玄冬の手紙のひとことが、
黒親子のすれ違いを思わせて、僕は居ても立ってもいられなくなっていた。
止まない雪が迫ってきて、白梟の態度もぴりぴりしているし、
黒鷹だって何かの算段で忙しいのかも――。
(ていうか、これ、絶対誘ってる。玄冬…)
手紙を握り締めて僕は呟いた。
別に、うまく留守なら二人きりになるチャンスだとか、そういう考えが、あるわけじゃない……。
僕は雪避けのマントを手に取ると、城の誰とも眼を合わせないようにして、
いつもの場所から城壁を飛び降り彼の元へと急いだ。
2.
白に塗りつぶされた草原を歩くのは一苦労だけど、夜になる前には彼の家に辿り着く。
雪に足を取られた人間より、俊敏に動ける動物は沢山いる。例えば熊とか…ね。
か弱い僕が熊と戦って一瞬で決着をつけてしまうところを、もしも誰かが見たら、
――別に構いやしないけど、余計な労力は避けたいから、家のノックも躊躇わない。
「玄冬。きたよ――」
(はあ……)
真っ直ぐにまっすぐに歩いてきたから、息が切れて、思わず深い溜息になる。
「花白? 来たんだ。……雪」
あらわれた玄冬は、僕が被っていたケープから、そっと雪を取り除いてくれた。
凍った欠片が温かい指先に壊されて、家の中からの光でキラキラと輝いた。
新雪に太陽が直接振りかかっても、こんな時の彼みたいに眩しくない。
「今、誕生日らしいモノを作ってたから、食べてくだろ?」
「あ…うん。もう出来てるの。黒鷹はどうしてんの。生肉切れで飢え死に、とか?」
フ、と笑って、台所へと先に進む彼。
彼の背中がいつもの歩調で台所に辿り着く頃には、僕の嫌な予感は最高潮に達していた。
3.
「先日十の国から行商人が来て、いいものを買ったんだ。」
「ちょ、と、待ってよ玄冬。また前みたいな“食べられない”ディナーだったら、来たこと後悔するからね!」
「そんなことはないだろう」
玄冬の暢気な口調がさらに僕の危機を煽る。いいものって何だろ、考えるだに恐ろしい。
「人魚のヒレ?キリンの背脂? ンもう、玄冬の訪問販売に騙される癖、絶対ダメだって!」
「そんなモノ売ってるワケないだろ!」
既に鍋には火が入っていて、コツコツと煮込まれているのが判る。
「判った、熊の手だ……」
「花白は人の弱みにつけこむなあ。で――今回の掘り出し物は」
玄冬は僕に何かを手渡した。白い包み紙には、多分細くて長いものが包まれていて、桜色が透けている。
「……にく?」
「なわけないだろう?ほら、これお前にやる」
「え…」
凍った肉や脂かと思った僕は、それが冷たくないことに眼を丸くして、思わずそっと鼻を近づけて匂いを嗅ぐ。……ろうそくだ。
白い紙を少しだけ破って包みを開けると、中には桜の模様が彫りこまれた、薄桃色の蝋燭が二本入っていた。
(わぁ…)
「いいの、これ……。キミの誕生日なのに」
「最後の二本だって言われて、お前の為に買った。
それに火をつけて春が来ることを祈ると、願いが叶うといわれている……らしい」
「そん、な」
願掛けの蝋燭をこの山奥まで売りに来るとは、馬鹿馬鹿しいような切羽詰っているような。
それを、なんでもないという声で彼その人が言うものだから、僕は胸が苦しくなる気がした。
蝋燭を胸に抱きしめて、彼の為に微笑みを作った。
「ありがとう…。部屋で使う。とても綺麗だね。君が好きなさくら…
ね、食事を頂くよ。黒タカにこのプレゼント、自慢してもいいくらいなんだけど」
玄冬はあぁ、と返事をして、愛用の寸胴なベに向かう。
ややして漂うコンソメの香り――ほっ、今日はフツウにシチューらしい。
「いただきまぁす!」
「いただきます」
「あは、今日のシチュー、最高のコンソメ!」
「だろう?」
残さずお食べ、と微笑む眼で、玄冬は僕の頭をそっとなでて、同じようにシチューを口に運ぶ。
小さな団欒、二人の口から漏れる湯気が、きっと外から覗き見てる鳥達から目隠ししてくれたらいいのにね――。
4.
その後、おなかが一杯になって、黒鷹のロッキングチェアでうたたねしていた僕。
玄冬が近づいて、毛布を掛けてくれるところで、現実に引き戻された。
「泊まっていけばいいのに」
「…ん、でも、無断外泊だから。あ、でも…」
玄冬の袖を引っ張って、こちらに影が落ちるともう一つの腕を伸ばし首を抱いた。
泊まって、という声が、本気なのも知ってる。けど、僕だって子供じゃないんだ。
「おやすみのキスだけくれたら、帰る。無事に、傷一つ無く…。そしてまた来るよ」
「お前、な……」
本当は、もう少し待てば、分厚い雲の下にもちゃんと朝が来る。
僕はその冥い、地獄のどこかを歩いているような気分になる、冷たい冷たい帰り道が嫌いじゃなかった。
今帰ればまた、彼にあえるのだもの――
「あ――忘れかけてたよ。おたんじょうび、おめでとう、玄冬」
ケープをきちんと着こんで灯を持たされた僕は、彼の身長に軽く背伸びをして、頬に口付けを送った。
(来年も、再来年も、絶対にお祝いするんだ。)
僕の決意が彼にとって、桜の花びら一枚より重かったら、嫌だなぁ――
終
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
誕生日(花白編)でーす。四月なのが玄冬でしたっけ… で12月が花白でしたっけ。
軽いノリで行き当たりばったりですね。多分、願掛け桜蝋燭を売りにきたのは、白梟な気がします。
そして花白の悪い予感は当たっていて、いつになく美味しいシチューには、玄冬秘蔵のへびさんの干物を出汁に使っていた……のでした。そんな事情を知っている黒鷹は居留守を決め込み――。
なんてオチ。てへっ。
ご精読ありがとうございました^^
2008.06.09
相変わらず
花帰葬… 私は携帯のアプリでプレイしたんですが、
その後お店を探したところ花帰葬交響曲とドラマCDとがあって、交響曲CDを買いました。
実に今、黒鷹の声とか欲しくて欲しくて、欲しいのですが…
最終的に何か手に入れるとその時点で飽きる、という性格を考えると
まだまだ買いすぎてはいけない気がします。
厄介な性格です。お金を使うことが好き(ということと同じらしい)(溜息)
でもだって、今知りえている世界観は、
ゲームの中心は花白と白梟と銀朱の白チームと、
玄冬と黒鷹と主の黒チーム、
あとは村の人とか女の子とか周囲の人なんだけど、
文官とか初代の二人とか、玄冬の両親とか、知らないよそんな人!
こくろ、こはなもあやしいくらいです。
(でもでも「こくろとあそぼ」と「こはなとあそぼ」@サメが飛んだ日さん
では遊んでもらってます♪)
全員一遍に扱って遊んでもいいものなのか?
こたかとかこふくろうも、あり?
妄想なら妄想で、どうせなら楽しく大中小の花白を
全員登場させてもいいものなのか?
もっともっと花帰葬で遊びたいので、どー設定を持つべきなのか
悩みます。うーん!
黒鷹「昔も今も未来も、一度に手に入れようだって?…(フフフ)」
花白「キミ、玄冬の最終進化系がどんなか知ってるの?僕は“僕の”玄冬がいいんだけど」
白梟「主を侮辱する表現は、二次創作といえども私が許しませんよ?」(←フツーに人の心を読めそうだと思う、白梟サン)
玄冬「俺、お前の妄想も実力もまだまだだと思う…(ボソ)」
玄冬さんだけは、いつまで経ってもキャラが掴めきれません。
シナリオ上、選択肢をあれこれ迷った記憶が私の心から消えないからでしょうかw
玄冬のキャラがあってこその、黒親子だったり、花玄だったり、めがねルートだったり、
本来の萌えが追求できそうな気もします。
あぁ…もう一回アプリでプレイしてきますっ
その後お店を探したところ花帰葬交響曲とドラマCDとがあって、交響曲CDを買いました。
実に今、黒鷹の声とか欲しくて欲しくて、欲しいのですが…
最終的に何か手に入れるとその時点で飽きる、という性格を考えると
まだまだ買いすぎてはいけない気がします。
厄介な性格です。お金を使うことが好き(ということと同じらしい)(溜息)
でもだって、今知りえている世界観は、
ゲームの中心は花白と白梟と銀朱の白チームと、
玄冬と黒鷹と主の黒チーム、
あとは村の人とか女の子とか周囲の人なんだけど、
文官とか初代の二人とか、玄冬の両親とか、知らないよそんな人!
こくろ、こはなもあやしいくらいです。
(でもでも「こくろとあそぼ」と「こはなとあそぼ」@サメが飛んだ日さん
では遊んでもらってます♪)
全員一遍に扱って遊んでもいいものなのか?
こたかとかこふくろうも、あり?
妄想なら妄想で、どうせなら楽しく大中小の花白を
全員登場させてもいいものなのか?
もっともっと花帰葬で遊びたいので、どー設定を持つべきなのか
悩みます。うーん!
黒鷹「昔も今も未来も、一度に手に入れようだって?…(フフフ)」
花白「キミ、玄冬の最終進化系がどんなか知ってるの?僕は“僕の”玄冬がいいんだけど」
白梟「主を侮辱する表現は、二次創作といえども私が許しませんよ?」(←フツーに人の心を読めそうだと思う、白梟サン)
玄冬「俺、お前の妄想も実力もまだまだだと思う…(ボソ)」
玄冬さんだけは、いつまで経ってもキャラが掴めきれません。
シナリオ上、選択肢をあれこれ迷った記憶が私の心から消えないからでしょうかw
玄冬のキャラがあってこその、黒親子だったり、花玄だったり、めがねルートだったり、
本来の萌えが追求できそうな気もします。
あぁ…もう一回アプリでプレイしてきますっ
2008.06.08
ふう…
地味に楽しい休日を過していました。
イベントとかは行ってないですが、カラオケと近所のお祭りと、植物弄り。
夜はすし屋、と予定していたら、ルルーシュが始まる時間とかで却下されました(凹
そんな感じです。
カラオケでは勿論、花帰葬を歌いました〜(笑)
他はサウンドホライズンとかガレシャンとかジムノペディとか、アリプロとか。
ありとあらゆる個人的趣味を、歌ってました。3時間で声が枯れた…。
それにしてもカラオケに置いてあるタンバリンって、プロ仕様?
以外と表現力が優れている気がします。
その歌を好きだと、ついノリノリで鳴らしてしまいますね。
ニコニコで良く聞く歌とかは軒並み歌ってきました(ぇ)が、志方さんのRAKAが入ってなかったのは少し残念でした。
きみしねもあるといいのにな〜
嗚呼良く遊んだ(笑)
お休みなさい。
イベントとかは行ってないですが、カラオケと近所のお祭りと、植物弄り。
夜はすし屋、と予定していたら、ルルーシュが始まる時間とかで却下されました(凹
そんな感じです。
カラオケでは勿論、花帰葬を歌いました〜(笑)
他はサウンドホライズンとかガレシャンとかジムノペディとか、アリプロとか。
ありとあらゆる個人的趣味を、歌ってました。3時間で声が枯れた…。
それにしてもカラオケに置いてあるタンバリンって、プロ仕様?
以外と表現力が優れている気がします。
その歌を好きだと、ついノリノリで鳴らしてしまいますね。
ニコニコで良く聞く歌とかは軒並み歌ってきました(ぇ)が、志方さんのRAKAが入ってなかったのは少し残念でした。
きみしねもあるといいのにな〜
嗚呼良く遊んだ(笑)
お休みなさい。
2008.06.06
花帰葬〜つぐない[鷹梟]
私の居城、管理者の塔は、それ自体が世界の果てで時を止めたかのように普遍不毛、来る日も来る日も灰色の体でハコニワの空を支え続けている。
濁った空も、朱に染まった空も。
凍える霜に覆われても、生い茂る植物の波に絡まれても――
此方が空を支える限り、永久に箱庭を箱庭たらしめる、動かぬゼンマイでもあるのだ。
(帽子にピンがなければ、格好が付かないのと同じ、だな)
そこに、いつからか、白梟が訪れてきてくれるようになった。
救世主と魔王の辿る運命が、世界の人々に与える影響など、神話か昔話だと思われるようになって久しい時が過ぎた。
人々は文明を増し、さらに多くの命を使い捨てる道へとまろび落ちていた。
空が何度毒を帯びても、私の羽根は折れることもなく、どこまでも独り、世界を、飛べた。
今失っても、また彼は呼び戻される……
何度殺されても人類の愚かさによって、神の子羊にされてしまう玄冬を、私は唯のシステムとして受け入れることができてしまっていた。
心をかきむしる、慟哭すら忘れた。
その昔玄冬であった「彼」との約束は、私自身の狂った願いであったのでは、と
――自らを疑うこともなくなった。
それは世界を救う為の仕事、なのだ。
小さな手を引いて飛べば、まるで包帯で包まれたような世界が一望できた。
ある年の冬、救世主の元に小さな玄冬を連れて行った帰りだ。
帰路を飛ぶ私を追って、いつからか白梟が後ろにいることに気が付いた。
白い気配には知らぬふりをして、塔までついてくるのかどうかを試すのも良かったが。
私は速度を緩め、その世界で最後の楽園とされていた広い湖が、厚い氷に閉ざされている湖面の真ん中に降り立った。
白梟も、打ち合わせる翼のから疑問に傾げる頭部を見せたが、大人しく氷の世界に共に下り立った。
「珍しいね、貴女が追って来るなんて。
こんな回り道をして、泣いているとでも思ったのかい」
雪に沈みかけている美しい世界を、己の存在を忘れるまで飛ぶことが私の慰めでもあった。
白梟は追い風に若葉色の裾を揺らして、不透明な表情の下言葉を捜していた。
「貴方は、玄冬を、いとおしんでいるのではなかったのですか」
「…ああ。勿論。何度出会ってもあの子だと判る。貴女が救世主を育てるように、
私は私のやり方であの子を育てて……送り出しているよ」
白の鳥の運命も、一筋縄でいかないのはお互いよく存じている。
白梟の衣は裾が派手に裂け、今回の救世主との軋轢が明るみにでてしまったことを物語っていた。
それを隠そうともしない手がわなわなと振るえ、何事かと目を留めた私に、掴みかかってきた。
「私はもう、この箱庭が嫌で、嫌で、仕方がなくなりました。
それというのも貴方が、ただ数えるだけの、瞳に何も写さないただの玄冬提供者になってしまったからですよ」
「そんな馬鹿な、私のせいか。きちんと仕事をしているのに。
主に見捨てられた世界でもね、そこに生きてる人間はもがいて、足掻いて、救われようとしているよ」
「貴方以外は、でしょう?」
私の凍った上着は黒い鏡のように冷えていたけれど、白梟は構わず腕を伸ばし、力強く私を抱きしめた。この嵐のような衝動を、私は焼けた鉄を押し当てられるようなものだとも、思っていた。
糾弾など早く終われば、良いと。
強制的に激情に付き合わされる私は、雪雲が切れ、澄んだ水色へと移り変わる背景の空をただぼうっと眺めていた。手さえ、彼女の腕に捕らわれて。
「雪が止んだよ、ほら」
言っては見たものの、険しい顔で真下から睨まれた。
「主が私に最後の切り札を取って置いてくださったことを、貴方は知っているかしら」
「なんだって――?」
「私は、新しい鳥を生むことが出来る」
「――――?」
卵ではないの、と茶化そうかと口を開きかけたところに、彼女の唇が押し付けられた。
それが何であるのか考えはじめるまでに、遠く広がる地平線に落ちようとする陽が、ピンクに萌える一滴の光を私の眼に焼き付けてきた。
驚いた。そして、覚え知らぬ涙が。まぶしさの余り、彼女の顔へと伏せた眼から、落ちた。
「新しい鳥って、我々のような?
それには一体、どのような意味が――?」
「貴方が協力してくれなくては、駄目なのよ。
新しい鳥によって齎される新しい環がどう動くのか、あの方は試算の途中で辞めてしまわれたと言っていたわ」
「ほお……」
湖の真ん中で彼女の腕の中、私は疲れ果てた声で溜息を漏らした、のに。
彼女の声ときたら、まるで初めて親に引き合わされた婚約者を、一目で気に入ってしまった少女のようだった。
(今までの敵対防御はなんだったの……)
白梟の、彼女自身が保ち続けた気位の高さというモノが、そのまま私の真上に倒れてきた、そんなショックだ。
「覚悟はよろしくて?私が、塔に通っても構わないですし」
「え、ええ…??」
(というか私の意志は、――?)
玄冬、ああくろと……
私のいとおしい君に、新しい友人が出来るかもしれないんだって。
友人というかね、親戚、の方が近いかな。
君の運命を、君自身が幸せになる方向に導く鳥さんだといいね。
父さん、そういうことなら、頑張ってみないでも、ないよ――
だから今度も、私の元に産まれて来ておくれ。
君をこれ以上殺さずに済む為のつぐないを、用意できるかもしれない、から。
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
わ〜!なんですかこの話!
途中までシリアスだったのに。謎展開。捏造。むしろコミカル。
鳥二人で新しい運命の鍵を握る鳥を誕生させたなら、救世主と魔王と○○って三すくみで、今度こそ世界が平和に保たれるかもしれない……っていう、そっちの妄想か、というお話でした。
……OK?(誰に聞いている)
濁った空も、朱に染まった空も。
凍える霜に覆われても、生い茂る植物の波に絡まれても――
此方が空を支える限り、永久に箱庭を箱庭たらしめる、動かぬゼンマイでもあるのだ。
(帽子にピンがなければ、格好が付かないのと同じ、だな)
そこに、いつからか、白梟が訪れてきてくれるようになった。
救世主と魔王の辿る運命が、世界の人々に与える影響など、神話か昔話だと思われるようになって久しい時が過ぎた。
人々は文明を増し、さらに多くの命を使い捨てる道へとまろび落ちていた。
空が何度毒を帯びても、私の羽根は折れることもなく、どこまでも独り、世界を、飛べた。
今失っても、また彼は呼び戻される……
何度殺されても人類の愚かさによって、神の子羊にされてしまう玄冬を、私は唯のシステムとして受け入れることができてしまっていた。
心をかきむしる、慟哭すら忘れた。
その昔玄冬であった「彼」との約束は、私自身の狂った願いであったのでは、と
――自らを疑うこともなくなった。
それは世界を救う為の仕事、なのだ。
小さな手を引いて飛べば、まるで包帯で包まれたような世界が一望できた。
ある年の冬、救世主の元に小さな玄冬を連れて行った帰りだ。
帰路を飛ぶ私を追って、いつからか白梟が後ろにいることに気が付いた。
白い気配には知らぬふりをして、塔までついてくるのかどうかを試すのも良かったが。
私は速度を緩め、その世界で最後の楽園とされていた広い湖が、厚い氷に閉ざされている湖面の真ん中に降り立った。
白梟も、打ち合わせる翼のから疑問に傾げる頭部を見せたが、大人しく氷の世界に共に下り立った。
「珍しいね、貴女が追って来るなんて。
こんな回り道をして、泣いているとでも思ったのかい」
雪に沈みかけている美しい世界を、己の存在を忘れるまで飛ぶことが私の慰めでもあった。
白梟は追い風に若葉色の裾を揺らして、不透明な表情の下言葉を捜していた。
「貴方は、玄冬を、いとおしんでいるのではなかったのですか」
「…ああ。勿論。何度出会ってもあの子だと判る。貴女が救世主を育てるように、
私は私のやり方であの子を育てて……送り出しているよ」
白の鳥の運命も、一筋縄でいかないのはお互いよく存じている。
白梟の衣は裾が派手に裂け、今回の救世主との軋轢が明るみにでてしまったことを物語っていた。
それを隠そうともしない手がわなわなと振るえ、何事かと目を留めた私に、掴みかかってきた。
「私はもう、この箱庭が嫌で、嫌で、仕方がなくなりました。
それというのも貴方が、ただ数えるだけの、瞳に何も写さないただの玄冬提供者になってしまったからですよ」
「そんな馬鹿な、私のせいか。きちんと仕事をしているのに。
主に見捨てられた世界でもね、そこに生きてる人間はもがいて、足掻いて、救われようとしているよ」
「貴方以外は、でしょう?」
私の凍った上着は黒い鏡のように冷えていたけれど、白梟は構わず腕を伸ばし、力強く私を抱きしめた。この嵐のような衝動を、私は焼けた鉄を押し当てられるようなものだとも、思っていた。
糾弾など早く終われば、良いと。
強制的に激情に付き合わされる私は、雪雲が切れ、澄んだ水色へと移り変わる背景の空をただぼうっと眺めていた。手さえ、彼女の腕に捕らわれて。
「雪が止んだよ、ほら」
言っては見たものの、険しい顔で真下から睨まれた。
「主が私に最後の切り札を取って置いてくださったことを、貴方は知っているかしら」
「なんだって――?」
「私は、新しい鳥を生むことが出来る」
「――――?」
卵ではないの、と茶化そうかと口を開きかけたところに、彼女の唇が押し付けられた。
それが何であるのか考えはじめるまでに、遠く広がる地平線に落ちようとする陽が、ピンクに萌える一滴の光を私の眼に焼き付けてきた。
驚いた。そして、覚え知らぬ涙が。まぶしさの余り、彼女の顔へと伏せた眼から、落ちた。
「新しい鳥って、我々のような?
それには一体、どのような意味が――?」
「貴方が協力してくれなくては、駄目なのよ。
新しい鳥によって齎される新しい環がどう動くのか、あの方は試算の途中で辞めてしまわれたと言っていたわ」
「ほお……」
湖の真ん中で彼女の腕の中、私は疲れ果てた声で溜息を漏らした、のに。
彼女の声ときたら、まるで初めて親に引き合わされた婚約者を、一目で気に入ってしまった少女のようだった。
(今までの敵対防御はなんだったの……)
白梟の、彼女自身が保ち続けた気位の高さというモノが、そのまま私の真上に倒れてきた、そんなショックだ。
「覚悟はよろしくて?私が、塔に通っても構わないですし」
「え、ええ…??」
(というか私の意志は、――?)
玄冬、ああくろと……
私のいとおしい君に、新しい友人が出来るかもしれないんだって。
友人というかね、親戚、の方が近いかな。
君の運命を、君自身が幸せになる方向に導く鳥さんだといいね。
父さん、そういうことなら、頑張ってみないでも、ないよ――
だから今度も、私の元に産まれて来ておくれ。
君をこれ以上殺さずに済む為のつぐないを、用意できるかもしれない、から。
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
わ〜!なんですかこの話!
途中までシリアスだったのに。謎展開。捏造。むしろコミカル。
鳥二人で新しい運命の鍵を握る鳥を誕生させたなら、救世主と魔王と○○って三すくみで、今度こそ世界が平和に保たれるかもしれない……っていう、そっちの妄想か、というお話でした。
……OK?(誰に聞いている)
2008.06.06
すごい気になる
すげー気になる、といいたいほど気になる事象。
白梟 は女性なのか?男性なのか?
CDドラマでは女性の声だし、充分女性には見えるんですが、
男性でも別に構わない気がする。
あーすると、もう少し気になるのは、黒鷹と白梟の関係性。
彼ら、仕事上別居中の夫婦なのか?!
嘘、オフィシャルには古い知り合い、みたいな書き方になっている。
いやそこは、妄想するところだろ〜(タメ)
結論:鷹梟でバッチリBLさせてみたい気が致します!
白梟 は女性なのか?男性なのか?
CDドラマでは女性の声だし、充分女性には見えるんですが、
男性でも別に構わない気がする。
あーすると、もう少し気になるのは、黒鷹と白梟の関係性。
彼ら、仕事上別居中の夫婦なのか?!
嘘、オフィシャルには古い知り合い、みたいな書き方になっている。
いやそこは、妄想するところだろ〜(タメ)
結論:鷹梟でバッチリBLさせてみたい気が致します!






