2008.06.30
花帰葬〜ハダカ【黒親子】
1
初夏、森の中が針葉植物の初葉の香に満ち、動物達の恋が実る季節。
俺と黒鷹は記憶に残る過去よりも徐々に季節の到来が遅れていることをさりげなく受け入れつつ、一応元気に、一応仲良くやっていた。
……というのは、だ。
この所黒鷹の奴が、出掛けてしばらくして帰ると傍目にも判るくらい血色良く、肌の色も健康的な艶を増しているという怪現象を起こしているからだった。
その事実について俺は何度か率直に指摘して問い詰めたが、奴は
「そんなに違うかい?へえ……」
とはぐらかすばかりでちっとも埒が明かないのだった。
怪しかった。
妙にスッキリした顔で悪びれないのも何故か癪に障る。
黒鷹が隠したいことなら黙って触れないでおくのが良いのかもしれないが、いつもと変わらない調子で若返りの秘術にはまってるなんてことだったら親の趣味としてなんとも気持ちが悪い。
だから俺は、奴の外出の跡をつけてみることにした。
2
初夏、森の中が針葉植物の初葉の香に満ち、動物達の恋が実る季節。
俺と黒鷹は記憶に残る過去よりも徐々に季節の到来が遅れていることをさりげなく受け入れつつ、一応元気に、一応仲良くやっていた。
……というのは、だ。
この所黒鷹の奴が、出掛けてしばらくして帰ると傍目にも判るくらい血色良く、肌の色も健康的な艶を増しているという怪現象を起こしているからだった。
その事実について俺は何度か率直に指摘して問い詰めたが、奴は
「そんなに違うかい?へえ……」
とはぐらかすばかりでちっとも埒が明かないのだった。
怪しかった。
妙にスッキリした顔で悪びれないのも何故か癪に障る。
黒鷹が隠したいことなら黙って触れないでおくのが良いのかもしれないが、いつもと変わらない調子で若返りの秘術にはまってるなんてことだったら親の趣味としてなんとも気持ちが悪い。
だから俺は、奴の外出の跡をつけてみることにした。
2
2008.06.06
花帰葬〜つぐない[鷹梟]
私の居城、管理者の塔は、それ自体が世界の果てで時を止めたかのように普遍不毛、来る日も来る日も灰色の体でハコニワの空を支え続けている。
濁った空も、朱に染まった空も。
凍える霜に覆われても、生い茂る植物の波に絡まれても――
此方が空を支える限り、永久に箱庭を箱庭たらしめる、動かぬゼンマイでもあるのだ。
(帽子にピンがなければ、格好が付かないのと同じ、だな)
そこに、いつからか、白梟が訪れてきてくれるようになった。
救世主と魔王の辿る運命が、世界の人々に与える影響など、神話か昔話だと思われるようになって久しい時が過ぎた。
人々は文明を増し、さらに多くの命を使い捨てる道へとまろび落ちていた。
空が何度毒を帯びても、私の羽根は折れることもなく、どこまでも独り、世界を、飛べた。
今失っても、また彼は呼び戻される……
何度殺されても人類の愚かさによって、神の子羊にされてしまう玄冬を、私は唯のシステムとして受け入れることができてしまっていた。
心をかきむしる、慟哭すら忘れた。
その昔玄冬であった「彼」との約束は、私自身の狂った願いであったのでは、と
――自らを疑うこともなくなった。
それは世界を救う為の仕事、なのだ。
小さな手を引いて飛べば、まるで包帯で包まれたような世界が一望できた。
ある年の冬、救世主の元に小さな玄冬を連れて行った帰りだ。
帰路を飛ぶ私を追って、いつからか白梟が後ろにいることに気が付いた。
白い気配には知らぬふりをして、塔までついてくるのかどうかを試すのも良かったが。
私は速度を緩め、その世界で最後の楽園とされていた広い湖が、厚い氷に閉ざされている湖面の真ん中に降り立った。
白梟も、打ち合わせる翼のから疑問に傾げる頭部を見せたが、大人しく氷の世界に共に下り立った。
「珍しいね、貴女が追って来るなんて。
こんな回り道をして、泣いているとでも思ったのかい」
雪に沈みかけている美しい世界を、己の存在を忘れるまで飛ぶことが私の慰めでもあった。
白梟は追い風に若葉色の裾を揺らして、不透明な表情の下言葉を捜していた。
「貴方は、玄冬を、いとおしんでいるのではなかったのですか」
「…ああ。勿論。何度出会ってもあの子だと判る。貴女が救世主を育てるように、
私は私のやり方であの子を育てて……送り出しているよ」
白の鳥の運命も、一筋縄でいかないのはお互いよく存じている。
白梟の衣は裾が派手に裂け、今回の救世主との軋轢が明るみにでてしまったことを物語っていた。
それを隠そうともしない手がわなわなと振るえ、何事かと目を留めた私に、掴みかかってきた。
「私はもう、この箱庭が嫌で、嫌で、仕方がなくなりました。
それというのも貴方が、ただ数えるだけの、瞳に何も写さないただの玄冬提供者になってしまったからですよ」
「そんな馬鹿な、私のせいか。きちんと仕事をしているのに。
主に見捨てられた世界でもね、そこに生きてる人間はもがいて、足掻いて、救われようとしているよ」
「貴方以外は、でしょう?」
私の凍った上着は黒い鏡のように冷えていたけれど、白梟は構わず腕を伸ばし、力強く私を抱きしめた。この嵐のような衝動を、私は焼けた鉄を押し当てられるようなものだとも、思っていた。
糾弾など早く終われば、良いと。
強制的に激情に付き合わされる私は、雪雲が切れ、澄んだ水色へと移り変わる背景の空をただぼうっと眺めていた。手さえ、彼女の腕に捕らわれて。
「雪が止んだよ、ほら」
言っては見たものの、険しい顔で真下から睨まれた。
「主が私に最後の切り札を取って置いてくださったことを、貴方は知っているかしら」
「なんだって――?」
「私は、新しい鳥を生むことが出来る」
「――――?」
卵ではないの、と茶化そうかと口を開きかけたところに、彼女の唇が押し付けられた。
それが何であるのか考えはじめるまでに、遠く広がる地平線に落ちようとする陽が、ピンクに萌える一滴の光を私の眼に焼き付けてきた。
驚いた。そして、覚え知らぬ涙が。まぶしさの余り、彼女の顔へと伏せた眼から、落ちた。
「新しい鳥って、我々のような?
それには一体、どのような意味が――?」
「貴方が協力してくれなくては、駄目なのよ。
新しい鳥によって齎される新しい環がどう動くのか、あの方は試算の途中で辞めてしまわれたと言っていたわ」
「ほお……」
湖の真ん中で彼女の腕の中、私は疲れ果てた声で溜息を漏らした、のに。
彼女の声ときたら、まるで初めて親に引き合わされた婚約者を、一目で気に入ってしまった少女のようだった。
(今までの敵対防御はなんだったの……)
白梟の、彼女自身が保ち続けた気位の高さというモノが、そのまま私の真上に倒れてきた、そんなショックだ。
「覚悟はよろしくて?私が、塔に通っても構わないですし」
「え、ええ…??」
(というか私の意志は、――?)
玄冬、ああくろと……
私のいとおしい君に、新しい友人が出来るかもしれないんだって。
友人というかね、親戚、の方が近いかな。
君の運命を、君自身が幸せになる方向に導く鳥さんだといいね。
父さん、そういうことなら、頑張ってみないでも、ないよ――
だから今度も、私の元に産まれて来ておくれ。
君をこれ以上殺さずに済む為のつぐないを、用意できるかもしれない、から。
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
わ〜!なんですかこの話!
途中までシリアスだったのに。謎展開。捏造。むしろコミカル。
鳥二人で新しい運命の鍵を握る鳥を誕生させたなら、救世主と魔王と○○って三すくみで、今度こそ世界が平和に保たれるかもしれない……っていう、そっちの妄想か、というお話でした。
……OK?(誰に聞いている)
濁った空も、朱に染まった空も。
凍える霜に覆われても、生い茂る植物の波に絡まれても――
此方が空を支える限り、永久に箱庭を箱庭たらしめる、動かぬゼンマイでもあるのだ。
(帽子にピンがなければ、格好が付かないのと同じ、だな)
そこに、いつからか、白梟が訪れてきてくれるようになった。
救世主と魔王の辿る運命が、世界の人々に与える影響など、神話か昔話だと思われるようになって久しい時が過ぎた。
人々は文明を増し、さらに多くの命を使い捨てる道へとまろび落ちていた。
空が何度毒を帯びても、私の羽根は折れることもなく、どこまでも独り、世界を、飛べた。
今失っても、また彼は呼び戻される……
何度殺されても人類の愚かさによって、神の子羊にされてしまう玄冬を、私は唯のシステムとして受け入れることができてしまっていた。
心をかきむしる、慟哭すら忘れた。
その昔玄冬であった「彼」との約束は、私自身の狂った願いであったのでは、と
――自らを疑うこともなくなった。
それは世界を救う為の仕事、なのだ。
小さな手を引いて飛べば、まるで包帯で包まれたような世界が一望できた。
ある年の冬、救世主の元に小さな玄冬を連れて行った帰りだ。
帰路を飛ぶ私を追って、いつからか白梟が後ろにいることに気が付いた。
白い気配には知らぬふりをして、塔までついてくるのかどうかを試すのも良かったが。
私は速度を緩め、その世界で最後の楽園とされていた広い湖が、厚い氷に閉ざされている湖面の真ん中に降り立った。
白梟も、打ち合わせる翼のから疑問に傾げる頭部を見せたが、大人しく氷の世界に共に下り立った。
「珍しいね、貴女が追って来るなんて。
こんな回り道をして、泣いているとでも思ったのかい」
雪に沈みかけている美しい世界を、己の存在を忘れるまで飛ぶことが私の慰めでもあった。
白梟は追い風に若葉色の裾を揺らして、不透明な表情の下言葉を捜していた。
「貴方は、玄冬を、いとおしんでいるのではなかったのですか」
「…ああ。勿論。何度出会ってもあの子だと判る。貴女が救世主を育てるように、
私は私のやり方であの子を育てて……送り出しているよ」
白の鳥の運命も、一筋縄でいかないのはお互いよく存じている。
白梟の衣は裾が派手に裂け、今回の救世主との軋轢が明るみにでてしまったことを物語っていた。
それを隠そうともしない手がわなわなと振るえ、何事かと目を留めた私に、掴みかかってきた。
「私はもう、この箱庭が嫌で、嫌で、仕方がなくなりました。
それというのも貴方が、ただ数えるだけの、瞳に何も写さないただの玄冬提供者になってしまったからですよ」
「そんな馬鹿な、私のせいか。きちんと仕事をしているのに。
主に見捨てられた世界でもね、そこに生きてる人間はもがいて、足掻いて、救われようとしているよ」
「貴方以外は、でしょう?」
私の凍った上着は黒い鏡のように冷えていたけれど、白梟は構わず腕を伸ばし、力強く私を抱きしめた。この嵐のような衝動を、私は焼けた鉄を押し当てられるようなものだとも、思っていた。
糾弾など早く終われば、良いと。
強制的に激情に付き合わされる私は、雪雲が切れ、澄んだ水色へと移り変わる背景の空をただぼうっと眺めていた。手さえ、彼女の腕に捕らわれて。
「雪が止んだよ、ほら」
言っては見たものの、険しい顔で真下から睨まれた。
「主が私に最後の切り札を取って置いてくださったことを、貴方は知っているかしら」
「なんだって――?」
「私は、新しい鳥を生むことが出来る」
「――――?」
卵ではないの、と茶化そうかと口を開きかけたところに、彼女の唇が押し付けられた。
それが何であるのか考えはじめるまでに、遠く広がる地平線に落ちようとする陽が、ピンクに萌える一滴の光を私の眼に焼き付けてきた。
驚いた。そして、覚え知らぬ涙が。まぶしさの余り、彼女の顔へと伏せた眼から、落ちた。
「新しい鳥って、我々のような?
それには一体、どのような意味が――?」
「貴方が協力してくれなくては、駄目なのよ。
新しい鳥によって齎される新しい環がどう動くのか、あの方は試算の途中で辞めてしまわれたと言っていたわ」
「ほお……」
湖の真ん中で彼女の腕の中、私は疲れ果てた声で溜息を漏らした、のに。
彼女の声ときたら、まるで初めて親に引き合わされた婚約者を、一目で気に入ってしまった少女のようだった。
(今までの敵対防御はなんだったの……)
白梟の、彼女自身が保ち続けた気位の高さというモノが、そのまま私の真上に倒れてきた、そんなショックだ。
「覚悟はよろしくて?私が、塔に通っても構わないですし」
「え、ええ…??」
(というか私の意志は、――?)
玄冬、ああくろと……
私のいとおしい君に、新しい友人が出来るかもしれないんだって。
友人というかね、親戚、の方が近いかな。
君の運命を、君自身が幸せになる方向に導く鳥さんだといいね。
父さん、そういうことなら、頑張ってみないでも、ないよ――
だから今度も、私の元に産まれて来ておくれ。
君をこれ以上殺さずに済む為のつぐないを、用意できるかもしれない、から。
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わ〜!なんですかこの話!
途中までシリアスだったのに。謎展開。捏造。むしろコミカル。
鳥二人で新しい運命の鍵を握る鳥を誕生させたなら、救世主と魔王と○○って三すくみで、今度こそ世界が平和に保たれるかもしれない……っていう、そっちの妄想か、というお話でした。
……OK?(誰に聞いている)
2008.06.06
花帰葬〜夜思う、春の申し子の回想【花白】
やあ……
君も雨宿り?
ん、嗚呼。――ね、
僕の桜色の髪ってそんなに珍しい?
……よしなよ。
その、おとぎ話みたいな話し、まだ覚えている人が居たんだね。
これで良かったと、思ってる。今は――
春爛漫。
人々に待ち望まれた雪解けと春の祭典も、一世代経つ頃には全く当たり前のことになっていた。
春の喜びが、一人の青年の死に引き換えてもたらされたものだという事実を、有り難がる人など最早誰一人居ない。そう、花白は確信して旅を続けていた。
その晩、朗らかに咲く花々を湿らせるか弱い雨は、隣国の遥か東方の酒処に花白を引き止めていた。
濡れることが苦手だからといえばもっともな理由に聞えるが、実際は、ただひたひたと身に取り付く中途半端な冷たさが、好きになれないからだ。
【永遠に世界を埋め尽す雪の重みなら、両手を広げて受け止めたさ】
一夜の喧騒が静まり始めた酒場には、一人の吟遊詩人の少女が骨董品のシタールを抱えて途方に暮れていた。
見れば瞳は擦り硝子の右目と、淡い水色の左目。
花白の姿を前にし言葉を交わす時も、精々影結ぶ所を探す気配を宙のあらぬ所に向けるだけだ。
「雨は恵み、私には、赤子をあやすように雨の手が大地を撫でて行くのが聞えますよ」
「ん、嗚呼……
(見えてないのか)。
――ねえ」
「はい、何でしょう救世主様?」
花白は軽く絶句してから、少女に自分の髪の色が見えているのかと問うたのだ。
少女は思わずほほ笑んで、シタールの胴を膝の上で軽く抱いて応えた。
「わたくしが初めて教えて頂いた歌は《春告げ》という歌でした。
今……貴方に御捧げしても?」
同じように、笑えたら良かった。
花白は感情を失った声で、新たな砂地に足を踏み入れてしまったような心地で言葉を紡いだ。
「よしなよ――
良かったと、思っているんだ、今は」
全てを終らせて完全な自由を得た自分は、かつて夜の中彼に奔走したあの日から見て、なんと遠い蜃気楼となってしまったのか、と。
少女の柔和な頬が浮かべた戸惑いは、更に慈悲的な微笑となり俯いた。
「良かったと、思ってる。
僕一人が背負ってたわけじゃない」
世界の為に――
君を失った。
とんだおとぎ話だから、君の不在を僕は永遠に手放さないよ。
「あ…………雨、上がりましたわね。」
店の中に忍び込んでいた雨音は、いつの間にかしんと治まっていた。
手のひらを持ち上げてみせる幼い詩人に、花白はそっとかがみ口付けを送った。
「ねえ詩人。
最高に美しい、冬の歌を作ってよ。
雪、嫌いじゃなかったから。――じゃあ、ね」
歩き出した青年を追って少女がふりかえると、その闇の中には花弁乱舞の如く淡い光が輝いて、また夜に消えていった――。
終
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
あ〜〜〜〜〜
眠いんですが書いてみました。玄冬無き後の暗い花白。
花白はもっと狂気で愛らしく書きたいもんです。では失敬っ
君も雨宿り?
ん、嗚呼。――ね、
僕の桜色の髪ってそんなに珍しい?
……よしなよ。
その、おとぎ話みたいな話し、まだ覚えている人が居たんだね。
これで良かったと、思ってる。今は――
春爛漫。
人々に待ち望まれた雪解けと春の祭典も、一世代経つ頃には全く当たり前のことになっていた。
春の喜びが、一人の青年の死に引き換えてもたらされたものだという事実を、有り難がる人など最早誰一人居ない。そう、花白は確信して旅を続けていた。
その晩、朗らかに咲く花々を湿らせるか弱い雨は、隣国の遥か東方の酒処に花白を引き止めていた。
濡れることが苦手だからといえばもっともな理由に聞えるが、実際は、ただひたひたと身に取り付く中途半端な冷たさが、好きになれないからだ。
【永遠に世界を埋め尽す雪の重みなら、両手を広げて受け止めたさ】
一夜の喧騒が静まり始めた酒場には、一人の吟遊詩人の少女が骨董品のシタールを抱えて途方に暮れていた。
見れば瞳は擦り硝子の右目と、淡い水色の左目。
花白の姿を前にし言葉を交わす時も、精々影結ぶ所を探す気配を宙のあらぬ所に向けるだけだ。
「雨は恵み、私には、赤子をあやすように雨の手が大地を撫でて行くのが聞えますよ」
「ん、嗚呼……
(見えてないのか)。
――ねえ」
「はい、何でしょう救世主様?」
花白は軽く絶句してから、少女に自分の髪の色が見えているのかと問うたのだ。
少女は思わずほほ笑んで、シタールの胴を膝の上で軽く抱いて応えた。
「わたくしが初めて教えて頂いた歌は《春告げ》という歌でした。
今……貴方に御捧げしても?」
同じように、笑えたら良かった。
花白は感情を失った声で、新たな砂地に足を踏み入れてしまったような心地で言葉を紡いだ。
「よしなよ――
良かったと、思っているんだ、今は」
全てを終らせて完全な自由を得た自分は、かつて夜の中彼に奔走したあの日から見て、なんと遠い蜃気楼となってしまったのか、と。
少女の柔和な頬が浮かべた戸惑いは、更に慈悲的な微笑となり俯いた。
「良かったと、思ってる。
僕一人が背負ってたわけじゃない」
世界の為に――
君を失った。
とんだおとぎ話だから、君の不在を僕は永遠に手放さないよ。
「あ…………雨、上がりましたわね。」
店の中に忍び込んでいた雨音は、いつの間にかしんと治まっていた。
手のひらを持ち上げてみせる幼い詩人に、花白はそっとかがみ口付けを送った。
「ねえ詩人。
最高に美しい、冬の歌を作ってよ。
雪、嫌いじゃなかったから。――じゃあ、ね」
歩き出した青年を追って少女がふりかえると、その闇の中には花弁乱舞の如く淡い光が輝いて、また夜に消えていった――。
終
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
あ〜〜〜〜〜
眠いんですが書いてみました。玄冬無き後の暗い花白。
花白はもっと狂気で愛らしく書きたいもんです。では失敬っ
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